twinkle twinkle 2

記入者　猫

twinkle twinkle　

 

「いらっしゃいませーってば」

有線放送の流れるコンビニの店内に、伸びやかな少年の声が聞こえる。モスグリーンとホワイトのストライプのシャツ。それに緑色のエプロン。全国チェーン店の規定の制服に身を包んでいる金髪碧眼の少年。

ツンツンしたひよこ頭が、今どきの男の子っぽくて、可愛らしい。

うずまきナルト１５歳。高校一年生。近所のコンビニでバイトを始めて、早五ヶ月目。

中学に上がって間もなくの頃、ナルトを育ててくれた祖父代わりの老人が死んだ。ひとりぼっちになったナルトはしばらく綱手姫という女傑のもとで暮らしていたが、いつまでも世話になりっぱなしになるわけにはいかないと自活を決意し、高校に入ると同時に一人暮らしを始めた。

それ以来、ときどき生活破綻しながらも、なんとなく生き延びている。

奇妙なお客が、コンビニにやって来るようになったのは、ナルトがコンビニでバイトを始めてしばらく経った頃で、銀髪の箒頭、色違いの瞳を持つ、はたけカカシという男だった。いつも決まって、インスタントコーヒーと煙草（はたけカカシが吸うのではなく髭クマという名の友人が吸うらしい）を買って行く彼に、「好きだ」と告白されたのは少し前の話で、最初は、同性の、それも大人から告白されたことに驚いた。

彼とナルトの間には色んなことがあったのだが、今は割愛させていただく。

とりあえず今の二人の関係は、コンビニの店員とお客以上･･･で、驚くことにキスまで済ましているが、付き合ってはいない。まだカカシの告白に応えられないナルトに「待ってるよ」とカカシは微笑んで、抱き締めてくれた。

端から見たら、まどろっこしいことこのうえない二人なのだが、ナルトにとっては思い出しただけでも、赤面必至で、思いは通じ合っているのに、あと一歩が踏み出せない微妙な関係が数ヶ月続いていた。

 

休日の昼間。コンビニには時々思い出したようにカップルや単身のお客が買い物に来る程度で、総じて暇だった。

もう一人のコンビニ店員、ヤマトの出勤時間まで、もう少し時間がある。

つまり今、コンビニの店内にはナルトしかいなかった。

暇で暇で、欠伸を噛み殺そうとした時、自動ドアが開いて、お客さんの気配はなかったのに変だな、と思いつつもナルトは背筋を正した。

「いらっしゃいませー････って！？」

ニャーン！

弾丸のような速さで、金色の何かが、店内に入って来た。

ニャーン、ニャーン、ニャーン！！

ぴょんぴょーん、と金茶のシマ猫が、軽やかにナルトの前に登場した。

あああ、店内は動物禁止だってばよ！！

すかさず心の中でツッコミを入れたが、残念ながら猫相手に言葉が通じるわけがない。

なので思い切って、心で念じてみようと思ったが、店内をぐるぐる走り回って暴走するニャンコは、奇怪な音を立ててブンブン飛び回る得たいの知れない虫に夢中だ。

ズザザザ、とナルトが仰け反る。特別に虫嫌いではないが、黒光りする固体を見て、背筋に寒いものが走った。

ゴキブリではない。しかし、同じ種類の悪寒がする。

それをニャンニャンと嬉しそうに、金茶の仔猫が追い駆けているものだから、やっぱ猫ってどんなに可愛くても人外の感性を持っているのだと、ナルトは深く納得した。

(･･･････あれ？)

あの猫ってば、もしかしてこの間の仔猫ぢゃねーか、とナルトはよくよく目を凝らす。

飼い主に良い餌をたくさん貰っていそうな、ぽこんと膨れた真ん丸いおなか、ふわふわふかふかした毛並み。

思わず目で追ってしまう愛くるしい動作と、激しく感じる謎の既視感。

決め手は悪戯好きでやんちゃそうな青い瞳。

ちなみに捨て猫ではなく、飼い猫だとナルトが一発でわかったのは、質の良さそうな首輪をつけていたからだ。

間違いない。コンビニの裏で、ナルトがオムライスをあげた猫だ。数ヶ月前より成長しているようだが、相変わらずちっちゃい。

どうやら今回は片割れの大人猫はいないようである。

「一匹だけでお散歩だってば？」

なんとなく二匹でワンセットのようなイメージがあったから、チビ一匹で、どうしたのだろうと心配をしていると、

にゃーん！

ぴょぴょーん。

災難は突然に。興奮気味のニャンコちゃんが、ナルトの顔前に飛び掛ってきた。

「おわ！？」

次の瞬間、ナルトの視界が見事にオレンジ色に染まった。

 

 









 
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「twinkle twinkle」は時系列的に「彼はイチゴミルク味のタラシ男」の最終話の昼間の話になります。