ちょこれいと本舗
ここはちょこさんと猫さんの経営するお店です。
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つなぐもの
記入者 ちょこ
「あ」
思わず声をあげてしまったおれと一緒に、ナルトも足を止める。
「どうしたってば?」
「あー、あのさ。ちょっと見たい店があるんだけど」
そう言うと、ナルトは嬉しそうに笑って
「いいってばよ、さっきからおれの見たい店ばっかだったもんな。どれ?どの店?」
おれの指差した方に向かって、跳ねるように歩き出した。
つなぐもの。
“お名前お入れ致します”
辿り着いた露店には大きな看板。
見本には相合い傘や、彼氏・彼女の名前を彫ったペンダント、LoveとかHoneyとか甘い言葉を綴った指輪。どれも1,000円~2,000円くらいの安物で、リング部分に切れ目の入ったフリーサイズだが、おれの目には神々しいまでに輝いてみえた。
「あの、あの、名前彫ってほしいんですけど……」
「え」
頬を染めて店主に声をかけたおれを、ぎょっとした顔でナルトが見上げる。
「これに彫りたい文字を書いて下さいね」と手渡されたメモに“kakashi naruto love forever”と書いたところで、すごい勢いでナルトに取り上げられてしまった。
「あっ、ちょっとまだ書きかけなのに」
「だだだだだだめ!!いくらなんでも恥ずかしいってばよ~!!!」
夜目にもナルトの顔は真っ赤だ。
そんなに恥ずかしいかなあ。
「え~~ペアリング作るの夢だったんだけど……」
実は、子供の頃から憧れていたのだ。
可愛い恋人ができたら、手を繋いでお祭りに行きたい。そしてエンゲージリングみたいに、指輪にお互いの名前とメッセージを彫り込んでもらって、一生の思い出に取っておくのだと。
まあ、最初に「いいなあ」と思ったのはまだナルトが産まれる前、おれが十二、三歳の頃だったし、当時なら微笑ましいと思えたこの夢も、三十路も過ぎた今となっては……確かにちょっと恥ずかしい……かもしれない。
だけど、だけど、十二の頃から夢見ていた、世界一素敵な恋人をようやく手に入れる事ができたのに。
「……どうしても、だめ?」
「う、……」
しょんぼり項垂れると、ナルトはちょっと戸惑った顔をして、ゴザの上に並べられたアクセサリーを前にちょこんとしゃがみこんだ。
なんだか一生懸命指輪を手に取り悩んでいるようだ。
うつむくと、浴衣の襟から白くて柔らかそうなうなじがすんなりと伸びて、なんとも色っぽい。
周りにいた男共(女も少々)が視線を釘付けにされる様子に気づいて、慌ててかぶさるように背後に立ち塞がってやった。こんなことなら昨夜のうちに、こっそりキスマークなんか付けてやれば良かった。
「あっ、これ、これとかどう?」
ナルトが大事そうに手の平にのせたそれは、シルバーに小さな碧いガラス玉が埋め込まれたもの。
子供にも手が届く値段の、玩具みたいに安っぽいはずのそれだったが、ナルトの白くてしなやかな手の平の上ではまるで、どんな宝石よりも美しく輝いてみえた。
「おれの瞳と一緒色だってばよ?」
照れくさそうなナルトの笑顔に、おればかりでなく辺り中の老若男女が頬を染める。しかし、今はおれもナルトの可愛い笑顔に釘付けで他の視線など気にならなかった。
「これは、おれからのプレゼント」
ナルトにも、恋人に何か買ってあげたいという想いがあったのだろうか。誇らし気な笑みを浮かべて、店主へ紙幣を差し出す。
そうだよね、ナルトも男の子だもん。
「ちょっと待って、ナルト」
おれもナルトの隣にしゃがみこみ、さっきのナルトみたいに一生懸命指輪を探った。あった、ナルトが見つけた指輪よりもっと深い濃紺のガラス玉が埋まった指輪。
「おれの瞳と一緒色の指輪……指に嵌めなくていいから、大事に持っててほしいんだ」
さすがに照れくさくて、おれもちょっと笑ってしまった。
ナルトもおれと目をあわせて笑う。
恥ずかしいけど、めちゃくちゃ幸せだと思った。
「あーーー、その指輪、包みますか~?」
「いや、このまま着けていきます!」
なんだか店主の声が疲れて聞こえたのは、気のせいだよね?
end
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