ちょこれいと本舗
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twinkle twinkle 3
twinkle twinkle
ナルトの瞳にそれは、まるでエメラルドのように映った。
一見黒いのだけれど、お日様が当たるとほんのり緑色を帯びて、きらきらと輝くのだ。
一度目にしたら、追いかけずにはいられない……魅惑の煌めき、その名もカナブン。
「にゃ、にゃにゃ……っ」
そいつはナルトの目の前から姿を消したかと思えば、また次の瞬間すごいスピードで現れる。
ブーン、ブーン……これまた猫にとってはたまらない旋律を奏でながら、まるでナルトを誘惑するかのように、何度も何度も目の前を往復するのだ。
ナルトの大きなくりくりの瞳も、右へ左へとそれを追ってくるくる動く。
「にゃーーあん!!!」
ナルトの瞳には、もうカナブンしか映っていなかった。
正直なところ、カカシのプレゼントとかそんな目的も、この魅力的な虫の前で今は塵と化していた。ただ、本能だけがナルトの体を支配していたのだ。
魅惑の宝石は、このちっちゃくて緊張感のかけらもない、ちょっと天然の入った小動物の中に眠る、野生さえも揺り動かすのだった。
もはやナルトは自分がどこを走っているのかもわからない。
そうしてあちこちをモモンガのように飛び回りながら、ナルトはなんだか(あれ、ちょっと前に似たようなことがなかったっけ?)と、妙な既視感に襲われた。
そう、あれはほんの一週間ほど前のことだった。
イルカのアパートに、これと一緒の虫が突然飛び込んできたのだ。
ナルトとカカシは、無我夢中で部屋を跳び回った。
コーン、コーン、コーン
カナブンはものすごいスピードで、そのくせ間抜けに部屋のあちこちにぶつかっている。
それがまた面白かった。
イルカは普段冷静で、いくらナルトが誘っても(カカシは絶対誘わない)猫の遊びに加わることは無いのだが、(修行にはたまにつきあってくれる)その日は楽しそうに(?)カカシとナルトを追っかけて狭い部屋を走り回っていた。
ヤメテー、オネガイダカラーってなにか叫ぶのが、意味はわからないけど楽しかった。
結局あの日は、イルカが開いた窓に何度も激突した後、命からがらカナブンが逃げてしまったので(せっかく窓を全開にしても、なぜか閉まった方の窓にゴンゴンとすごい勢いでぶつかるのだ。カナブンはサクラが言っていた“まぞ”っていうやつなのかもしれないと、ナルトは思う)ナルトはもちろん、カカシにも捕まえることができなかったのだ。
「……そっか!」
カカシにも捕まえることができなかったカナブン。
今、ナルトが捕まえてプレゼントしたら、きっと喜んでくれるに違いない!
それだったら、今のナルトのできる精一杯だし、修業の成果としてカカシに見せることもできる。これだけ努力をすれば、気持ちだってこもるはず。
イルカだって喜ぶに違いないので、まさに一石二鳥、いや、三鳥?
俄然やる気になったナルトは、今までよりももっと速く、もっと高く、走って跳んだ。いつのまにやらコンビニの中に入っていて……カナブンを追いかけているうちに、タイミング良く自動ドアが開いてしまったのだ……たった一人で店番をしていた可愛い店員さんが、必死に自分の心に呼びかけていることになど、気づくわけもない。
ナルトの頭の中は今、緑に輝く虫でいっぱいなのだ。
ナルトの大好きな、まぐろ&ささみ&チーズの猫缶(ちょっと高いのでイルカは滅多に買ってくれない)が雪崩を起こしても気づかない。
イルカの愛読書、週刊少年ジャン○が棚から転がり落ちた。
サスケが泣いて喜びそうなオニギリも、ころころとどこまでも転がっていく……しかし、どれもこれもナルトの視界には入っていなかった。
狙うはただ一つ。
「カナブン、捕まえたーーっ!!!」
にゃーん!!!
思いっきり飛び付いたはずなのに、貼り付いた先はなんだかふにゃふにゃ柔らかい何かで。
「おあ!!!」
「にゃにゃ?」
なんだかナルトのお腹の辺りから声がする。
それがふらふらっとよろめいたかと思うと、今度はグラっと揺れて、最後はガン!っと大きな音が鳴った。
今度はずずずずずーっと、ナルトが張り付いているそれがエレベーターみたいに下に降りて行って……
「なんだか、オムライスのおにーさんの匂いだってばよ?」
いつだったか、ナルトとカカシに美味しいオムライスをご馳走してくれた、優しいおにーさん。どこからかそれと同じ匂いがする……しかし、それがどこなのかはわからないのだ。
「はにゃん??」
ナルトは、その何かに張り付いたままくりくりんと首を傾げた。