ちょこれいと本舗
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twinkle twinkle 5
記入者 ちょこ
twinkle twinkle
「にゃーん、にゃーーーんにゃあああん!!離せっ、離せってばあ」店員に抱きあげられて、ナルトは焦っていた。
さっき目の前まで追いつめたカナブンが、ほんの一瞬目を離した隙にどこかに逃げてしまってわからないのだ。
店員さんは、いつかのオムライスのおにーさんだ。
通りでいい匂いだと思ったが、いつの間に現れたのか、ナルトはびっくりだ。
それに、優しいと思っていたのにこんなイジワルをするなんて……ナルトはショックでいっぱいだった。
今日中になにがなんでも捕まえなくてはならないのに……。
おにーさんの手から逃れようとじたばた暴れてみても、いくらおにーさんの腕や手首が欲しくても、さすがに仔猫では敵わない。
ちっちゃな手足を必死に動かしながらカナブンを探す。
小さなコンビニは、それでも仔猫には大きすぎて、一度見失った小さな虫を再び見つけるのはとても難しい。
「おにーさんは優しい人だと思ってたのに……なんでこんなイジワルするってばあ?」
いけない、ちょっと涙が出てきた。
泣いたりしたら立派なボス猫になれないってカカシに言われたのに……。
ナルトはギュッと歯をくいしばって、涙が落ちそうになるのを耐えた。
「あ、いたっ!!!」
潤んだ目を凝らしてぎんっと見つめた方向……ナルトが入ってきた自動ドアのすぐ前に、カナブンがいる!
「にゃーん!もう逃がさないってばよ!!!」
飛びつこうとしたが、そうだ、今はおにーさんの両手の中……。
「おにーさん、離してあそこに、ほら、あそこにいるんだってばよ~~!」
……その時だった。
不幸なことに……カナブンにとっては幸いなことに。
扉がういいいんと開いたのだ。
はしゃいだ子供が自動ドアの前を駆け抜けた一瞬の拍子に、扉が開いてしまったのだ。
夢中なナルトは気付いていなかったが、カナブンとナルトがこの店内に入れた時も、同じようなことがあったのかもしれない。
「あっ、あああ!!!」
ぶ~ん、微かな羽音をたてて、カナブンは外へ逃げてしまった。
「なんで、なんでだってば……?カナブン、イルカ先生の家じゃ、どんなにいっぱい窓を開けてもコンコンぶつかってなかなか出られなかったくせに……」
おにーさんの手の中で、ナルトはがっくり項垂れた。
どうしよう、外は日が暮れかかってきた。
カナブンの他に、カカシにプレゼントするものなんか、何も考えていない。
あれを捕まえるしか、ナルトには残された道は無かったのだ。
(どうしよう……これじゃ、もうカカシ先生になぁんにもプレゼントできないってば……)
目の奥がじわんと熱くなってきた。
泣いちゃダメだ、ボス猫になれないってばよ、と自分を奮い立たせてみても、どうにも元気がでない。
これでもナルトは本気の本気でカカシのことが好きなのだ。愛しちゃってるのだ。
その自分がサクラのいう“恋猫的イベント”の一つである誕生日のことも知らなくて、こうして満足に何一つプレゼントすることもできない……悔しかった。
おにーさんが何か話しかけている。
邪魔したことを謝っているのだろうか。
(でも、おれってばぜーったい許さねえもん……)
ナルトは、優しい大好きなおにーさんに裏切られた思いでいっぱいだった。
「ナルト……?」
「にゃ?」
唐突に名前を呼ばれる。声の主は、言わずと知れたおにーさんだ。
「なんでおれの名前知ってるってば?」
ナルトは、自分の首輪にご丁寧に名前が刻みこまれていることなんか知らない。
さっき許さないと思ったことなどすっかり忘れて、人懐こい仕草でくりくりんっと首を傾げた。
“おれ”とか“ナルト”とか、あと“お揃い”とか、少しだけわかる言葉が出てきたが、カカシほどに人語を解さないナルトには、よくわからなかった。
ただ、見上げたおにーさんが優しい顔で笑っているので、やっぱりこの人はほんとはイジワルじゃないのかもしれないな、なんて思う。
「いい名前でしょー。イルカ先生がつけてくれたんだってばよ!」
にゃごにゃごと一生懸命お話している途中で、顎の下をこちょこちょされる。
イルカの大きくてごつごつした指に比べると、小さくて細くてすべすべの指だ。
「にゃっ、にゃあん」
喉が勝手にゴロゴロ言ってしまう。
「にゃ、おにーさんもっとこちょこちょってして~~~じゃないってばよ!任務、おれってば任務の途中!!カカシ先生のプレゼントをチョウタツするっていう重大なミッションが……はにゃにゃ~~ん……」
だめだと思うのに、おにーさんの指は気持ちよすぎて、ナルトの頭の中はついついお花畑になってしまう。
頭が小さい分、脳の容量も大きくないのだ……。
「もっと~にゃあ~ん」
おにーさんの小さめの指を両手で捕まえて、かじかじのはむはむする。
ナルトは時々カカシによじのぼって、首のとこにぎゅっとしがみついて耳なんかをかじかじしてやると、カカシはいつも「やめなさいよ~」とか言いながら、すごくご機嫌になるのだ。
ちょっと睨んだりしたって、尻尾がくにくに動くからすぐわかる。
「……カカシ先生?!」
はっとナルトは我に返る。そうだ、カカシのプレゼントだ!!
ぱちっと目を開いた先で、それはふわふわと揺れていた……。
「もしかしてこれが欲しいとか?」
「欲しいってば!!」
にゃーん!!ナルトは勢いよくそれに飛び付いた。
ふわふわ、ふりふり、目の前で揺れる綺麗な色の紐。
見ていると、なんだか体がムズムズしてしまう。
さっきの虫より、ずっと綺麗で面白い。
「プレゼントみーっけた!!!」
今度こそ捕まえてみせる!
しかし捕まえたと思ったそれはぎりぎりのところでさっと身を(?)かわして逃げてしまった。
ぺちゃんっと机の上に倒れ伏したナルトだが、しかし心の中は喜びでいっぱいだった。
「……な、なかなかやるってばね……そうこなくっちゃ!!」
再び突進する。
ナルトの目には、もうその綺麗な紐しか映っていない。
おにーさんもカウンターも、自分が今どこにいるのかも見えていなかった。
カウンターから落ちそうになったナルトをおにーさんが間一髪つまみあげて助けてくれたことなど、知ったこっちゃないのだ。
「捕まえる~!絶対手に入れてやるんだってばよ~!!!」
気づけばそれはもうちょっとで手に届くところまできている。
あとちょっと、これを逃せば、もう他のプレゼントなんて見つからない。
ナルトの碧いビー玉みたいな瞳には、綺麗な紐とカカシの笑顔だけが映っていた。
「……な、なにやってんの……あのこ……」
カカシは、店から少し離れた電柱の陰から、愛し子の姿を見守っていた。
今日は姿の見えないナルトを心配してあちこち探しまくっていたのだが、途中でサクラに声をかけられた。
なんでも、カカシの誕生日のためにプレゼントを探しに行ったとかいう。
本音を言えば、何をもらうよりも一日ナルトが傍にいてくれる方がずっと嬉しいのだが、しかし、自分のために努力している姿というのももちろん嬉しい。愛されているんだな、と、カカシの胸はほっこり暖かくなった。
もちろん、カカシのために頑張っている姿を本人に見られたくなんかないだろうから、そんな男の矜持を守ってやるためにも、カカシは知らないふりをしてやるつもりだ。
……しかし。
ナルトの“努力する姿”は、これまでにいろんなことを経験してきたカカシにしてみても、あまりに予想外だった。
「一体どうやってあの中に……あそこは、おれ達が乗っても開かないはずだぞ?」
ナルトと一緒にカウンターにいるのは、カカシが“ナルト(大)”と呼んでいる人間らしい。
何故だかナルトは、ナルト(大)の手首を追いかけているようだ。
カウンターの上で転がったり、落ちそうになったり、かと思えばナルト(大)に向って腹を出したり……いろんな意味でカカシには、ハラハラドキドキの連続だった。
「ん?」
ガラスの向こう、ナルト(大)がナルトに手首についていた何かを差し出したようだ。
ハシっとそれを捕まえたナルトはすっかりご機嫌で、紐にすりすり頬ずりしたり、紐を抱っこしたままころころとカウンターを転がったりしている。
そんな姿も可愛らしくて、カカシの目尻はでれっと下がり落ちてしまう。が。
「???????!!!!!!!」
一瞬後、カカシの瞳はまんまるになった。
全身の毛がぼわっと逆立つ。
「にぎゃっ??!!!」
店の中。
近くて遠いその場所で。
ご機嫌なナルトがうにゃんっと伸びあがって、ナルト(大)の唇にちゅうをしたのだ!!!
「ちょ、ナル、おれ以外の男とちゅうするなんて……!いや、でも相手はナルト(大)だし……ある意味パラダイス?!ナルトとナルトがちゅう……で、でもおれ以外の……!!!!」
ぷしゅう……
カカシの頭はショートしてしまった。