ちょこれいと本舗
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
猫とコンビニ店員とオムライス
「新しい“いきつけ”に連れてってやるってばよ!」
えっへんと胸を張って、ナルトがとっても偉そうに宣言した。
「こないだのイチラクじゃなくて?」
ナルトの後に続きながら問いかけると「新しいトコロ」と返事。
なんでも、同じ服を着たたくさんの若い人間が、何も言わなくてもパンやらおにぎりやら美味いものを食べさせてくれるのだとか。まるでナゾナゾだ。
同じ服を着た……中学生か高校生の生徒ってとこ?
で、おにぎりにパンとくれば……
着いたのは、おれの予想通り、最近イルカのアパートのそばにできたコンビニだった。
しかし、今日は来る時間が遅かったのか、駐車場に中高生の姿はない。
ナルトがおれを待っていたせいで時間がいつもとはずれてしまったんだろう。
学校が終わる時間からは、だいぶ過ぎてしまっている。
部活帰りらしい、体操服やユニフォームを着た生徒はちらほらいるものの、いつもナルトにご飯をくれる常連さんとは違うようだ。
「あれ~~~?いつもはこのへんにたくさんいるのに……」
ま。おれは人間の女にきゃあきゃあ触られるなんて冗談じゃないし、こうやってナルトとデートできただけでも「ラッキーだったなー」って感じなんだけどね?
ナルトは、せっかくおれに美味いもの食わせようとしたのに、上手くいかなかったのが悔しいみたいで、俯いてグルグル唸っている。
「ナァルト、今日はまあ、ちょっと運が悪かったってことじゃない?お腹すいたし、またイチラク行こうよ。イルカからチャーシュー奪ってやってもいいよ?」
柔毛に頬擦りしながら提案すると、ナルトはしぶしぶ頷いて、重い腰を上げようとした。
その時。
くん。
ナルトの鼻が鳴る。
「なんか、美味しい匂いがするってばよ?」
顔をあげると、コンビニの中から緑色のボーダーのシャツ……コンビニの制服か?……それを着た、やけに鮮やかな色彩の人間が、手に何か食い物らしい容器を持って出てきたところだ。
薄暗がりにも眩しい、鮮やかな金髪だ。
遠くてはっきり見えないけど、どうも瞳は蒼……なんだかデジャヴを感じちゃう??
おれが首をかしげている間に、ナルトは転がるようにその人間の足元へ駆け出した。
もう、なんだってお前にはそう、警戒心が無いかなー?!
おれは慌てて……でも、慌てて見えないようにゆっくりと、それでいて早足で、その後を追いかけた。
「おめーら、腹空いてんの?」
人間がおれとナルトに話しかける。
見れば見るほどどこかで見たような……?
ナルトは、人間の手に乗せられた玉子料理に夢中で食いついて、おれに奢るつもりで連れてきたことなどすっかり忘れている様子だ。
人間の手から何かを食べるつもりはないが(イルカの手からも食べたことなんかない)なんとなくこの人間の手に乗せられたものなら食ってもいいかなあと思ってしまうのは……。
ああ、そうか。
金の毛並(髪?)に青い目。人懐こく明るい笑顔。
ナルトに似てるんだ。
そう思って見ると、まるで夢のような光景だ。
ナルト(大)にじゃれつくナルト(小)。
おれはうっとり、一人と一匹の心温まる情景を眺めた。
世の中には三匹似た猫がいるって聞いたことがあるけど、その中に人間が含まれる場合もあるんだな……。
「おまえカッコイイってばねぇ」
不意にナルト(大)から声をかけられて、おれの耳が勝手に動いた。
さすがナルト(大)。人間のくせに見る目あるねぇ。
ちょっといい気分になったその時
「なにやってんの?」
突然おれのスイートドリィムをぶち壊す不埒な声が響く。
ナルト(大)の後から現れたそいつは、ナルト(大)より随分大きくて、この国の人間にしては珍しい銀色の髪。
左目に大きな傷がある。
人間のくせにこいつは何と戦ったんだろう?
ん?誰かと似てないか、こいつも。
こいつとナルト(大)は、やけに仲がいいみたいだ。
雄同士なのに羨ましい……そんなことをぼんやり考えていたら、
「この子猫のほう物凄く可愛いね」
そいつはいきなり、おれのナルトを抱き上げた!
そしてその時、おれの高性能な耳は、ナルト(小)の呟きを聞き逃さなかったのだ。
「わあ、なぁんかかっこいい人間だってばね!」
こーーいーーーつーーーはーーーー!!!!
おれ以外の男を「かっこいい」とか言うんじゃないよ!(例えそれが人間でも!)
そして、こともあろうにナルトの喉をこちょこちょしようとした男に、おれはついにぶちきれて、その手の甲に思い切り爪を立て、速攻でおれのナルトを取り戻したのだった。
見送る人間達を背に、家に帰るおれはめちゃくちゃ機嫌が悪い。
「いつもおまえの耳にタコができるほど言ってるでしょ!むやみに知らない人間に懐いちゃいけませんって!」
ナルトはしゅんとしながら「はあい」と返事。
「でも、あの人間は大丈夫と思ったんだってばよー。特にあの大きい方の人間、カカシせんせそっくりなんだもん」
……恋を知って馬鹿みたく単純になったおれは、たったその一言で、速攻ご機嫌になっちゃったんだけどね。
end